翻訳を始めたばかりの方にオススメ、安西徹雄「英文翻訳術」

最近、翻訳に取り組んでいるのですが「英文を読み・理解する」ということと「日本語に翻訳する」ということは、似ている部分も多くありますが、かなり異なるものだということがわかってきました。

もちろん「翻訳する」ためには前提として「英文を理解する」ことが必要です。理解できない英文を翻訳することは不可能です。ですが「理解できた」としても「どうも日本語にうまくできない」とうことが往々にして発生します。

ではどうしたら上手いこと「日本語に翻訳」できるのでしょうか。今回はこの一冊をお勧めします。1000円、文庫270Pほど。2日あれば読み終わりますので、とてもいいですね!

所有格+名詞 (動作系)は、主語・動詞の形に戻して考える

The Dog’s attempts to climb the tree after the cat came to nothing.

上記「Dog’s attempts」を「犬の試み」と翻訳すると、もはや何なのかわからなくなります。その調子で続けると「猫に続いて木に登ろうとした犬の試みは、徒労に帰した」となりますが、古文か!

上手く翻訳するポイントは「Dog’s attempts」のような「所有格+名詞(動作系)」という表現を、主語・動詞の形になおして考えるということです。

「Dog’s attempts to climb」は結果として「犬は猫の後を追いかけて木に登ろうとしたが、無駄だった」とすればよい、ということです。

つまり、所有格+名詞をシンプルな文章に一旦なおしてあげて、それを参考に翻訳をしてあげればいいのだ、ということです。

例えばもう一個。

His failure to fulfil the promise made the voters suspicious. 

これもですね、簡単な文に直したら以下のようになります。

  1. He failed to fulfil the promise. (彼は約束を守らなかった)
  2. And The voters were suspicious about him by that.  (そのために、有権者は彼を信用していない。)

結果として「彼が約束を守らなかったので、有権者は彼を信用しなくなった」と翻訳することができます。なるほど!

難関、関係代名詞は、とりあえず切る

関係代名詞って覚えてますか?こんなやつでした。

There are plenty of races at the present day who have fully developed languages in which they can express everything that is in their mind, but who have no system of writing.

そもそもなんでこんなに長くしてしまうのか、よくわかりませんが、そう書かれてるんだから怒っても仕方がありません。 なんとか翻訳しましょう。

とりあえずこれを直訳すればこうなります。「現在、頭の中に思い描いていることを全て言葉で表現できる、十分に発達した言語を持っているが、書くシステムを持っていない部族がたくさんある。」なげーよ!

これはもう、こう切ってもいいでしょう。「現在、十分に発達した言語を持ち、思考対象を言葉で表現することができるが、書く仕組みを持たない部族がたくさんいる。」これでも長いか!でもかなり良くなりました。

英語特有の文型を一旦シンプルな文に直してから、日本語を考えれば良い

本書全体の戦略は「英語特有の文型を一旦シンプルな文に直してから、日本語を考える」というものです。この後も「No 〜」とか「Any 〜」とか「What makes 〜」とか日本語にはあまりないけれど、英語ではよく出てくる文型を平易に直すならどうなるのか、という分解の仕方を教えてくれます。

一度分解してしまえば、あとは簡単ですよね。こなれた日本語を当てればいいだけです。

大事なのは、文法の知識を活用して、「主語と動詞と対象語の関係を明確にする」ことです。そしてそれが明確になってしまえば、あとはその関係を守った上で、「自然な日本語を新たに作文」すればよいのだ、とのことです。なるほど。

ビビらずに意訳していくこと

これは私の意見ですが、文法的に正確に翻訳しようとすることには2つの弊害があります。

  1. 文法上難解な箇所は、大抵意味的には重要ではないため、時間をかけて精度を上げることに、あまり意味がない。
  2. 一箇所だけ正確に翻訳できても、正確な意味を取ることはできない。(全体像を正確につかむことがむしろ必要。)

私の経験から言って、大事なことは、シンプルに、誰が読んでもわかるように書きます。そして何度も書きます。もし、文学的で倒置など修辞技法が多用された文型で、一度しか重要なことを書かないとしたら、読者に伝わるでしょうか?普通伝わりません。ですから、著者は大事なことを何度も誰にでも伝わる形で繰り返します。その中には一部、強調するために難しい型で描かれることもあるでしょう。しかし他の場所の意味を取りさえすれば、こういった箇所も理解することができます。だから、難しいところは適当に翻訳するか、もしくは飛ばしてもいいくらいです。とにかく簡単な箇所を翻訳していくことで、全体の意味がわかるようになります。

恐れずに翻訳しないと、誰もしてくれない

自分は英語の専門家ではないし、翻訳とか間違えそうだし、恥ずかしいなあ、きっと誰か詳しい人がやってくれるだろう、と私も以前思っていました。

しかし、英語翻訳の専門家だからといって、あなたの領域の専門家ではないので、そういった英語の専門家が専門書を翻訳することはほとんど無理です。

あなたの領域の英語文献を日本語に翻訳できるのは、ほぼあなたしかいない、と思った方がよいと思います。そしてあなたがしなければ、一生その文献は紹介されないと思って間違えありません。

ですから、少しくらい英語が間違えていても、その情報を日本の人に伝える価値があります。がんばりましょう!

ではまた!


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